今年は特にイギリスの大学または大学院への進学相談をよく承っていますが、希望の進学先大学を聞いて感じるのは「自分が学びたいことを学べる大学かどうか」というよりも「大学の知名度やブランド」で選んでいる方が多いな～、というもの。
決してそれに異議を唱えるわけではないのですが（私も大学受験先は名前で選んだところもあるので）、英国の大学の日本での知名度というのも限定的ですし、名門系大学を検討すると条件も上がってきて進学も難しい、というケースも出てくるわけです。
そこで今回のコラムでは各主要都市を代表する名門大学の陰に隠れがちながらも良質で国内外の評価が高い、そして入学要件の緩やかな「New University」を取り上げていきます。
名門系大学 vs New University？
イギリスの名門研究系大学と言えば「ラッセルグループ」24校です。
ラッセルグループの特徴
- イギリス名門研究系大学の協力機構
- 最高の評判と桁違いの研究規模と予算
- 教育施設が相当充実していて比べ物にならない数の優秀な教授が在籍
- ラッセルグループの大学が世界大学ランキングで最上位を独占
- イギリス内で総研究資金の3分の2を使用
- ラッセルグループに属する大学には英国国内の学生のみならず、ヨーロッパをはじめとる世界各国からの留学生が集まる
もっともこれらの大学は
- 出願要件のハードルが高い
- 学費が高い
- 履修の難易度が高い
といった懸念点もあるので、まずはご自身の条件と比べていかがでしょうか？
そもそもイギリスの約130校あると言われる大学のほとんどは国公立大学です。必ずしも抜群の国際的知名度を誇る大学でなくても教育や学術研究の水準は高い、というのがイギリス進学のメリットと言えるでしょう。
New Universityへ進学するメリット
一方「New University」のメリットとしては
- 出願要件のハードルがそれほど高くない
- 学費がリーズナブル
- 就職率の高さ
というもので、キャリア教育&実学に強いので、人気のビジネスやエンジニアリング、メディア、ホスピタリティといった専攻でしたらNew Universityのほうがお薦めです。
都市別の名門大学とNew University（トップ大学編）
次に都市別の名門大学とNew Universityのトップ大学をご紹介いたします。
（★＝New Universtiy）
オックスフォード
オックスフォード大学
11世紀の末に設置された英語圏最古、また世界最高学府でもあるオックスフォード大学はケンブリッジ大学、そしてアメリカのハーバード大学を始めとするアイビーリーグと並び世界最高峰の評価を受けています。
学士課程への出願のためには国際資格A Levelの最高レベルの評価、または国際バカロレア（IBDP）の相応の規定スコアの取得が必要です。
★オックスフォード・ブルックス大学（Oxford Brookes University）
1992年にUniversityとしてのステータスを与えられたオックスフォード・ブルックス大学の前身はオックスフォード・ポリテクニック＝つまり職業訓練校でした。
現在では140以上の国からの16,000人以上の学生が学ぶ規模に成長した近代的な大学で、QS World Universityランキングの「Young University」カテゴリーでも選出されました。ビジネス＆経営学、エンジニアリング、音楽、アート、建築学がお薦めです。
★オックスフォード・ブルックス大学への進学方法
教育機関「INTO Manchester」のファウンデーションコースやプレマスターコースからのパスウェイ
ケンブリッジ
ケンブリッジ大学
ケンブリッジ大学はイギリス最古のオックスフォード大学と合わせて「オックスブリッジ」とも呼ばれており、アメリカのハーバード大学やイエール大学を始めとするアイビーリーグと並び世界最高峰の評価を受ける大学。
元は修道院から由来すると言われる伝統的なカレッジ制を採用しており、31のカレッジのいずれかに学生と教師は在籍。卒業生や教員のノーベル賞受賞者が現在120名と世界で最も多くのノーベル受賞者を輩出している大学としても知られています。
★アングリア・ラスキン大学（Anglia Ruskin University=ARU）
1992年にUniversityとしての承認を得たアングリア・ラスキン大学ですが、その由来はCambridge School of Art（ケンブリッジ芸術学校）設立の1858年まで遡ります。
現在はケンブリッジを含む4つの地域にキャンパスを持ち30,000人以上の学生が在籍。またヨーロッパや東南アジアの各大学とも提携し、積極的なグローバル展開を行う新進大学として知られています。ビジネス経営学をはじめ、医学&ソーシャルケア、音楽医療、建築学、美術などで英国をリードする存在です。
★アングリア・ラスキン大学への進学方法
ファウンデーションコースやプレマスターコースからのパスウェイ
ロンドン
ロンドン大学
多くの大学がキャンパスを構えるロンドンの中でも、現在18のカレッジ・研究機関を束ねる連合大学ロンドン大学は最大規模と言えます。
特にロンドンスクールオブエコノミクスやユニバーシティカレッジロンドン、キングスカレッジロンドンは国内外トップランクとして知られ、クイーンメアリーやシティ、バークベックといったカレッジもそれぞれ独立した大学として高い評価を得ています。
★ロンドン・サウスバンク大学（London South Bank University）
元はポリテクニックとして1892年に創立されたロンドン・サウスバンク大学も1992年にUniversityとして承認されたNew Universityです。テムズ川近くのサウスバンクエリアに位置する大学では実学とキャリア教育に特化。
卒業生の就職率向上に力を入れるとともに力を入れており、現在は「英国で卒業生の初任給額が高い大学Top10」に成長しました。専攻では演劇・ダンス、ビジネス、経済学、法律、エンジニアリングといった分野に強いです。
★ロンドン・サウスバンク大学への進学方法
ファウンデーションコースやプレマスターコースからのパスウェイ
ロンドン・サウスバンク大学の様子を動画で見てみる
都市別の名門大学とNew University（その他のハイランク大学編）
続いて都市別の名門大学とNew Universityのハイランク校をご紹介いたします。
マンチェスター
マンチェスター大学
イギリスで最大規模の大学のひとつであり、1824年の設立以降現在までに教授や卒業生から25名のノーベル賞受賞者を輩出（受賞者数はケンブリッジ大学、オックスフォード大学に次ぐ）、教育や研究水準の高さから世界から注目を集めています。QS World University ランキング（2021年）27位、イギリス国内では6位を記録。
★マンチェスター・メトロポリタン大学（Manchester Metropolitan University）
1970年に複数のテクニカルカレッジが統合してできたマンチェスター・ポリテクニックが発祥で、その後さらに複数校との合併を経て1992年にマンチェスター・メトロポリタン大学として認定を受けました。
33,000を超える学生数でマンチェスター大学と同じく国内有数の大規模校として知られます。MBAを開講するビジネススクールとして世界で1%のトリプルクラウン校であり、ビジネスのほかアート&デザインや建築学の分野でも高い評価を得ています。
★マンチェスター・メトロポリタン大学への進学方法
教育機関「INTO Manchester」のファウンデーションコースやプレマスターコースからのパスウェイ
リバプール
リバプール大学
ラッセルグループ（英国一流研究系大学群）の一員であるとともに、伝統校の証である「赤レンガ大学」の1校でもある国内外で非常に評価の高い大学。
これまでに9名のノーベル賞受賞者を輩出しています。世界初とも言われる建築学科のほか商学や医学、歯学、薬学、化学等などの分野においても秀でた研究成果を挙げています。
★リバプール・ジョン・ムーア大学（Liverpool John Moores University）
前身は1825年設立のLiverpool Mechanics' School of Artsから、その後複数のカレッジとの合併を経て、リバプール・ポリテクニックへ。そして1992年の大学認定と同時に実業家のジョン・ムーアの名を冠してリバプール・ジョン・ムーア大学へと改名しました。
工学、法律、自然科学をはじめ幅広い分野から専攻を選べるほか、リバプールという立地もあり音楽やスポーツ（サッカー）に関わる専攻プログラムも扱っています。
★リバプール・ジョン・ムーア大学への進学方法
ファウンデーションコースやプレマスターコースからのパスウェイ
バーミンガム
バーミンガム大学
イギリスの人口第二位の活気ある都市バーミンガムに位置するバーミンガム大学はラッセルグループに加盟している国立大学で、1900年の設立以来、卒業生から11名のノーベル賞受賞者に英国首相も輩出。赤レンガを基調とした美しいキャンパスが特徴。
QS世界大学ランキング（2022）では90位。主要な専攻はビジネス、数学、政治学、アメリカ研究学、神学、情報工学、工業化学、物理学など 。
★バーミンガム・シティ大学（Birmingham City University）
他の多くのNew Universityと同じくポリテクニックから1992年にUniversityとして認定されたバーミンガムシティ大学。キャンパスはバーミンガム国際空港に近く、学内の設備投資に力を入れているだけに近代的な校舎に最新設備を導入しています。
ビジネス、会計、ネットワーク工学、ITシステム、建築学、教育学、法学、マーケティング学、看護学などが主要な専攻です。
★バーミンガム・シティ大学への進学方法
ファウンデーションコースやプレマスターコースからのパスウェイ
ノッティンガム
ノッティンガム大学
イングランド中部の学生都市ノッティンガム。英タイムズ紙では「英国における真の国際大学」とも評された国内5番目に大規模な大学です。名門研究系大学連盟ラッセルグループのほか、University21、ヨーロッパ大学組合にも加盟しています。
国内ランキングでは毎年のように上位30位以内に位置づけており、研究分野と総合的評価でも世界トップクラスと評価されています。海外の各種研究機関とも積極的に提携を行いその学術と研究に国際的な視点を取り入れており、マレーシアと中国にもキャンパスを構える英国有数の国際大学です。
★ノッティンガムトレント大学（Nottingham Trent University）
ノッティンガムトレント大学はノッティンガムとその郊外に3つのキャンパスを3つを置き、1992年に大学として認められて以降は国内最大規模の大学に成長。
学生の満足度の高さや、新卒者の就職率、大学院進学率の高さも大きなポイントです。モダンな設備と校風を持った大学で、専攻分野ではビジネスやヘルスサイエンスのほか、ファッションデザイン、クリエイティブアートといった学科が有名です。
★ノッティンガムトレント大学への進学方法
ファウンデーションコースやプレマスターコースからのパスウェイ
ブリストル
ブリストル大学
ラッセルグループ加盟、ノーベル賞受賞者12名輩出しており、イギリス大学ランキングでは毎年トップクラスにランクイン（2022年は14位）。卒業生の就職率の高さや企業が求める人材の出身校などイギリス国内外で高い評価を受けています。
ブリストルの壮大な建築物や美しい自然の中にブリストル大学の各施設は点在しており、ライブラリーや24時間利用可能なコンピュータールーム、スポーツ施設、ドミトリーなど設備面も充実しています。
★西イングランド大学ブリストル校（UWE Bristol）
1992年に大学として認可されたUWEブリストルは現在はブリストルの街に4か所のキャンパス、29,000人の学生と3,000人のスタッフが在籍しています。
前身のポリテクニックの流れによりキャリア直結の実践的な教育を行ってきた大学で卒業生の高い就職率がポイントです。評価の高い専攻分野はクリエイティブ・メディアと生物科学、ビジネス、ロボット工学、法学、建築学です。
★西イングランド大学ブリストル校（UWE Bristol）への進学方法
ファウンデーションコースやプレマスターコースからのパスウェイ
リーズ
リーズ大学
イングランド北部リーズにあるリーズ大学は英国大学ランキング15位。1904年に設立したイギリスの名門研究系大学連合「ラッセルグループ」に加盟し、QS世界大学ランキングでも100位圏内にランクインする英国有数のトップ大学の1校です。
ビジネスのほか人文科学系専攻の評価が高く、数多くの専攻分野で英国内ランキングトップ10入りをしています。秋篠宮佳子様が2017年から1年間交換留学をされた大学であり、School of Performance and Cultural Industriesにて主にパフォーマンスデザインやステージマネジメントの授業を履修されました。
★リーズ・ベケット大学（Leeds Beckett University）
リーズ・ベケット大学は元はリーズ・ポリテクニックから1992年にリーズ・メトロポリタン大学として大学に昇格。そして2013年には現在のリーズ・ベケット大学に改名されました。多種多様な専攻プログラムが提供される中でも、経済学やビジネス、メディア&コミュニケーションが人気。
多くのNew Universityと同じく、学生の卒業後のキャリアの可能性に注力しており、多くのコースにはインターンシップが組み込まれたカリキュラムを採用。長期インターンシップを組み合わせたサンドイッチコースなど、学生が卒業後に関連業界の即戦力となれるようなサポートを提供しています。
★リーズ・ベケット大学への進学方法
「Leeds International Study Centre」でのファウンデーションコースやプレマスターコースからのパスウェイ
学校の様子を動画で見てみる
リバプール・ジョン・ムーア大学
ノッティンガムトレント大学
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いかがでしたか？日本での知名度はそれほどでも、英国内で評価の高いNew Universityもぜひご検討ください。留学生にとっても進学しやすく、また専攻分野によってはラッセルグループのような名門研究系大学よりも適している場合があります！
海外留学は高いハードルがあるように思えますが、語学力、成績が少し足りない留学生のための道、パスウェイがあります。
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