ヨーロッパに憧れていて、大学ではドイツ語を専攻していたわたし。大学2年生の夏、ついにドイツの大学が開催するサマーコースに参加することにしました。
人生はじめてのヨーロッパ、人生はじめてのプチ留学。留学に行けばなにかが変わる!と思っていたわたしですが、現実はそう甘くはありませんでした。
南ドイツへ1ヵ月の短期留学決定
わたしは大学のドイツ語学科に所属していました。そこでは毎年夏になると、南ドイツのとある大学で開催されるサマーコースへの案内が配られます。大学主導のプログラムなので、語学学校などに通って自分ですべての手続きをするより、圧倒的に安く楽にプチ留学をすることができます。
ずっとドイツに行ってみたかったわたしは、友だちと一緒にサマーコースに参加することを決めました。わたしの大学からは20人ほどが参加したのですが、そのうち18人が知り合いということで、ちょっとした旅行のような気分でした。
現地では午前中はドイツ語の授業、午後は週3日ほど自由参加のアクティビティが設けられていました。初ドイツでなにがなんだかわからないわたしは、同じようになにもわからない友だちとともに、ドイツを満喫。ビール祭りに行ったり、スイスやオーストリア、ノイシュヴァンシュタイン城にも行きました。
大学での必要な手続きは、参加していた中にドイツ在住経験がありドイツ語も堪能な人がいたので、その人に頼りきりでした。自分でなにか手続きした記憶はまったくありません。
「たった1ヶ月しかいない」という気持ちもどこかにあったのでしょう。とにかく色々なところに行って、思い出を作ることが「有意義」だと思っていました。
サマーコース終了後の後悔
サマーコースの授業は、ペーパーテストでドイツ語のレベル別に分けられました。わたしは比較的マジメに勉強していたので、10段階中上位の7組目でした。ですが、ペーパーテストで7組目に割り振られても、実際の授業はちんぷんかんぷん。ドイツ語を話したことがなかったので、まず単語が言葉になって出てきません。さらに、単純にリスニング力の問題で、聞き取れないことも多かったです。
結果、1ヶ月のサマーコースを終えて帰国してみると、残ったのは多くの写真とお土産だけ。思い出といったら、大学の友だちと週末のたびに出かけていたことくらい。なにを学んだかと言われれば、なにも答えられないような状況でした。
もちろん、それが悪いわけではありません。楽しかったですから。ですが自分のなかで、「それだけで良かったのか?」という後悔があったのも事実です。
1ヶ月しかいられないぶん、いろいろなところへ行きたいのは、当然の心理です。ですがもっと現地の大学生と交流したり、留学生同士で仲良くできたんではないかと思うのです。そして、もっと本気になっていれば、たかが1ヶ月とはいえ、ドイツ語は多少なりとも上達していたでしょう。
1ヶ月のサマーコースは、わたしに「ドイツに行った」という経験をもたらしてくれましたが、それ以上の成果はなく、ただ友だちと長期旅行に行っただけになってしまいました。
1年間の留学で成長することを誓う
その1年後の大学3年生の夏、わたしは再びドイツへやってきました。大学同士の交換留学生の座を射止め、1年間の留学の切符を手に入れたのです。サマーコースでは消化不良だった語学学習や、現地での体験をしよう、と心に決めていました。
結果、1年の留学生活は、とても実りが多いものになりました。
多くのドイツ人の友人に囲まれ、最初はドイツ語で自己紹介しかできなかったわたしも、大学に正規入学できるほどまでドイツ語が理解できるようになりました。友人の家へ行ってドイツ人の暮らしを体感したり、ドイツ人と一緒に講義をとって単位を取得したりと、毎日大忙しでした。
1年の留学を終えて確信したのは、ちゃんと準備していたら、サマーコースの1ヵ月の滞在でももっと学ぶことができていたはずだということです。
もちろん、1ヶ月の滞在と1年の滞在では、心構えもできることも、大きくちがいます。ですが、やはり旅行気分でいたのはもったいなかったと思います。
たとえば、サマーコースと並行して、現地の大学の授業を受講していたら? 現地で日本語を勉強しているドイツ人と、もっと積極的に交流していたら? 大学の友人だけでなく、もっと違う国の人と知り合っていたら? そうすれば、1ヵ月の滞在でも胸を張って「ドイツに行ってきたよ」と言えていたかもしれません。
留学という限られた時間をどう使うべきなのか?
留学する理由は、人それぞれです。遊びに行く人もいるし、研究しに行く人もいます。どちらがいい、悪いとは言い切れません。ですが留学中、なにかに対して「やる気がある」状態でいる必要はあると思います。
「旅行しまくってインスタにアップする!」でも、「留学中にTOEICで満点を取る!」でも、「友達100人作る!」っていうのでも、なんでもいいんです。ただ、本気になれるものを自分のなかにしっかり据えておかないと、留学は「なんとなくいい思い出」で終わってしまいます。
わたしがサマーコースに対して後悔が残り、交換留学のときは「やりきった」という気持ちになったのは、その「本気になれるなにか」があったかどうかが大きな違いでした。
限られた人生のなかの、限られた時間を使っての海外生活。いかに自分らしく、実りの多いものにできるかは、自分のなかでなにに本気になるかを明らかにして、それを守ることです。これから留学する人はぜひ、「留学中は本気で〇○する!」と決めてから行ってほしいと思います。