私はこれまで、5ヶ国、7回の海外留学を経験してきましたが、この記事では、1番最初にした「たったの2週間のフランス短期語学留学」の経験を共有しようと思います。なぜならこの短い2週間の体験が、その後のフランス語学習、そして進路選択に、とてもポジティブな作用をもたらしたからです。

おそらく2週間の「超」短期留学に対し、語学力の飛躍的な伸びを期待する人はそんなにいないのではないでしょうか?

この記事では、留学先のフランスのトゥールについて、そしてたった2週間の短期留学がその後の学びにどのように作用して行ったか、私のケースを紹介したいと思います。

短期語学留学先トゥール(Tours)

私が短期語学留学をした街、トゥール(Tours)は、フランス中西部に位置するロワール地方にあります。ロワールは、フランスの中でどちらかと言えば裕福な地域なのではないかと思います。街もパリやトゥールーズ、ストラスブールと比べて、白人の住人が多くを占めていたように思います。

そんなロワールは、中世の王族たちがこぞって城を築いた地域でもあり、今でも立派な古城が数えきれない程残っています。

シェノンソー城やシャンボール城など、車がないと辿り着きにくい城も沢山あるので、留学先にロワール地方を選ぶメリットととして、清潔で、治安が良い点に加え、古城巡りが思いっきり出来る点も挙げられるかもしれません。

短期語学留学先トゥール(Tours)

短期留学中の語学的な変化

初めてのヨーロッパ、初めての留学。ドキドキの気持ちとは裏腹に、トゥールに到着した初日、私もホストファミリーも困り果ててしまいました。

なぜなら私のフランス語力があまりにも破滅的であったからです。そもそも、大学でフランス語を学び始めて3ヶ月目だった当時の私のフランス語は、どこをとっても未熟で不完全すぎるものでした。

定冠詞の仕組みや、主語によって不規則に変化する動詞活用など、英語と違う全ての文法事項がまだ真新しく感じられる時期でした。

英語以外の外国語を学ぶのが初めてだったこともあり、フランス語独特の文法体系があることを知りつつも、いつも英語の仕組みを思い出しながらフランス語を理解しようとしていたことにも問題があったでしょう。

学校の開講を待ちながら、ホストファミリーと意思疎通がいかないままに過ごしたその3日間は、私の日本でのフランス語学習の仕方に間違いがあったことを痛感させられる瞬間でもありました。

当時の私のフランス語で、現地で唯一役立てられたこといえば、自己紹介(名前/年齢/出身地)することくらいでしたが、3日間永遠と自己紹介するわけにもいきません。

情けないことにその時の私は、自己紹介のフレーズを他の単語に置き換えて、何か別のことを説明する応用力すら持ち合わせていないのでした。

覚えたての超基本単語たち(数字や月や曜日、色など)は、会話で必要になる時、口から出てくる気配が全くなく、仮に思い出せたところで読みかたが定かではない。

そんな状態でしたから、ホストファミリーとの会話といえば、ご飯の時の「C’est très bon. 」、寝る前の「Bonne nuit」、行ってきますの「Bonne journée!」、それ以外は何も伝わらず、赤ちゃんに戻ったような気持ちでした。

またその当時の私は、外国人学生の受け入れに立候補するということは、ある程度英語が話せるということだろうと勝手な解釈をしていたのですが、それが大きな勘違いであることも分かりました。

ドイツや北欧などと比べると、40代以上のフランス人が英語を話せることはかなり珍しいこと言えるかもしれません。

そんなトゥールでは、Tours Langueという小さな語学学校の少人数授業に通い、朝から午後まで授業を受けていました。ホストファミリーとの会話が少しずつ出来るようになったのは、学校の2日目に過去形の文章の作り方を覚えたことがきっかけでした。

過去形の文法を学んだことによって、今日は何をして、どこへ行き、何を食べたか、急に説明出来るようになったからです。

そうして、新しい文法の規則を学ぶことが、その日の会話の幅を直接広げていく経験を毎日繰り返しました。ホストファミリーと食事の時間、食事後のティザンヌの時間の意思疎通の為にも、覚えた文法をその瞬間から使っていく取り組みです。

おそらくこの姿勢こそが、私が日本でフランス語を学ぶ時に欠けていた視点なのだと、その時分かりました。当時大学で大学を学んでいた私にとって、どこかで語学も暗記科目と似たようなものだという認識がありました。

フランス語の読み方がわからなくても、話せなくても、日常生活で困ることはないので、与えられた課題は消費するように受け身の姿勢で取り組み、それ以外の努力はしていませんでした。

3ヶ月何も学ばなかったわけではないけれど、現地で何も出来なかった原因は、その姿勢にあったのです。この2週間の滞在は、語学を学ぶ態度を改めるきっかけとなりました。

フランス語を、科目の1つとして捉えず、自分で使うものとして捉えられたことで、能動的に語学学習をするようになったからです。

結果としてこの留学から5年後、私はフランスの大学院に正規学生として入学することになるのですが、もしこの短期留学をしていなかったら、もしかしたらフランス語とは無縁の学生生活、そして人生を送っていたかもしれません。

お世話になったホストファミリー

フランス短期語学留学まとめ

たったの2週間、現地でフランス語を学んだだけですが、ホストファミリーとなんとか意思疎通したいという焦る気持ちが、それまでの受動的な学習態度を改めるに至らせました。

するとずっと捉えられなかったフランス語の文法体系も、頭の理解を超えて身体的に捉えられるようになり、英語を介さずに、直接フランス語で文を組み立てるようになっていくのでした。

私はこの経験を経て、よく分からない言語に対するスランプから抜けたような気がしました。その後の私は、学ぶこと1つ1つを、まるでスポンジのように糸も簡単に吸収していったのです。

最初は大の苦手意識を感じていたフランス語だけれど、実践する楽しみを早い段階で体験出来たことで、その後の学習を更に実りあるものへ換えていくことが出来ました。そう長期的に考えてみると、たった2週間の短期留学でも、何かしら効果を生み出せるかもしれません。

留学というと、なかなか踏み出せない人も多いかもしれません。そんな場合には、まずは数週間のお試し留学をおすすめします。きっと何かしら感じるもの、見えてくるものがあるでしょう。